「いてて。今日もまた一段と激しかったな…」
眼鏡と学生服を身につけた青年、遠野志貴はそう言って、学生服を脱ぎ寝巻に着替えた。
「まったく、秋葉も先輩もアルクェイドもいい加減仲良くしてほしいよな…」
今日もいつものように三人でドンパチしたのだった。まぁ、このドンパチ騒ぎは大元の原因は彼にあるのだが、本人は全く気付いていない。よく翡翠や琥珀に「愚鈍」や「朴念仁」と言われている。
「明日が休日だったら良かったのに…」
明日は普通に学校である。「つ〜、まだ痛みがある」彼の体には様々な傷痕があった。特に酷いのは胸の傷だが、これについては関係ないので割合とさせてもらう。ちなみに一番多い傷痕は切り傷(爪やら剣やらを巻き添えに喰らうので)。「さっさと寝て身体を休めるとしようかな」
今の時間は二十一時五分前。学生が寝るには早い時間だ。
「にゃ〜」
窓から大きなリボンをつけた黒猫入って来た。
「やぁ、レン。一緒に眠りに来たのか?」
黒猫の名はレン。彼の使い魔だ。猫の姿をしているが、人の姿にもなることができる。人型の時はそれはもう可愛いロリっ…げふん、げふん、その、え〜と、そう!可愛い十歳と少しくらいの女の子だ。
「にゃ〜」
「よしよし、じゃあ一緒に寝ようか」
彼はレンを抱き上げてベッドに向かい横になって、
「おやすみ、レン」
「にゃー」
深い眠りについた。
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「んっ。あれ?」
遠野志貴は困惑していた。それはそうだろう。先ほど寝巻に着替えベッドに横になって眠りに入ったのに、学生服で昼間の公園に立っていたのだから。
「え〜と。…ああ、そうか!レンの仕業か!」
レン、彼女は夢魔であるため他者の夢に力を加えられる。そうされた者は夢を現実のようにリアルに体験できる。
「だけどなんでまた…」
「お前と遊びたかったんじゃないか?」
疑問を口に出すた時、公園の入口の方から男の声が聞こえた。
「なっ!?」
「よう」
男は遠野志貴にそっくりだった。違いといえば眼鏡を掛けていないこととやや吊り目であること、そして纏っている雰囲気。まるで、近づく者全てを殺すような雰囲気だ。
「なんでお前が…!?」
彼の名は七夜志貴。遠野志貴のもう一つの可能性だったかもしれない人物。
「なんで、か。それはそこにいる夢魔にでも聞くんだな」
「えっ」
言われて初めて遠野志貴はレンが自分の直ぐ後ろにいるのに気付いた。
「………(怒)」
気付くのが遅い、そう非難してる目だった。
「ご、ごめん。レン」
「……(ぷいっ)」
拗ねてしまったようだ。
「ごめんよ、レン。今度ケーキを買ってあげるからさ。機嫌直してよ」
「………(キラキラ!)」
どうやらケーキという単語に食らいついたようだ。
「ククっ」
先ほどまで黙っていた七夜志貴が小さく笑った。
「…何笑ってるんだよ」
笑われたことがおもしろくなかったのか、遠野志貴は少し声を荒げた。
「いやなに、使い魔に振り回されるマスターというのがな、ククっ」
「なんかむかつくなぁ。そういえば、レン。なんであいつがいるの?」
遠野志貴はレンに答えを求めたが、
「(ふるふる)」
本人は知らない、と言っているようだ。
「えっ、じゃあなんであいつがいるんだろう?」
遠野志貴が疑問に思っていたら、
「それは私が呼んだから」女の子の声が聞こえた。
声が聞こえた方を見ると、「君は…」
「お久しぶりね、“遠野”志貴」
「…白レン」
彼女はレンを真っ白に染めたような姿だった。今年の夏にタタリを滅ぼした後にタタリの残りカスとレンの“未使用”部分が合わさって出来た存在だ。そして世間で知られるツ「黙りなさい!」はいっ!すいませんでした!
「どうしたの、白レン?」
「なんでもないわ。気にしないで志貴」
まさか、こちらの声が聞こえているとは…流石色々な二次創作サイトでギャグキャラを任されている人物だ。侮れん。
「本題に入りましょう。彼を呼んだのはどちらのマスターがマスターとして優れているか勝負するためよ」
「マスターとして?」
「……?」
「ええ。どれだけ使い魔のことを理解しているかで勝負するの」
「例えば?」
「使い魔が何を欲しているかとか、何をして欲しいかがすぐに理解できるかどうかよ」
「…つまり、使い魔たるお前らを楽しませろ、そういうことか?」
今まで黙っていた七夜志貴がそう言った。
「ちちち、違うわ。どどど、どちらかがよりマスターとして使い魔のことを理解しているかを競うのであって…!?」
「いや、素直に楽しませてください、そう言え」
「違うったら、違うの!」
「なら帰る」
「ダメ」
「なら素直に言え」
「う〜っ」
七夜志貴と白レンのコントが始まった。
「俺達なんか背景化してるね、レン」
「………」
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「とにかく、私の言う通りにすればいいの!」
「あー、分かった、分かった」
「そう、最初からそう言えばいいのよ」
約一時間ほどでコントは終了した。そういえば夢の中での一時間って現実世界ではどのくらいの時間なのかな?
「それじゃあ、行きましょう」
「どこへ?」
唐突に言った白レンの言葉に対して遠野志貴は当然の疑問を聞いた。
「そうね…。んっ、何、レン。えーと、ケーキが食べたい?…そうね、じゃあまずアーネンエルベに行きましょうか」
何か姉妹みたいだな、レン達。
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「すみません、ショートケーキとティラミスを二つずつ。それと珈琲を一杯。お前は?」
「何もいらん」
「じゃあ、それでお願いします」
「かしこまりました」
店員は店の奥に消えた。
「それにしてもどうしたんだ、急に呼び出して」
「だから、マスターとしての…」
「違うだろ」
「……」
「遊びたかったんだろ、本当は」
「違…」
「違わないだろ?」
「う〜」
「お前の負けだ、レン。素直に認めろ、『遊びたかった』と」
「……(コク)」
「それじゃあ、ケーキを食べ終わったら遊びに行こうか」
「………うん」
白レンが頷くと同時にケーキと珈琲が来た。
「………(キラキラ!)」
レンの目が輝いていた。
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「それじゃあ、まずゲームセンターにでも行こうか?」
「ゲームセンター?」
「……?」
「行けば分かるよ」
「…俺としては今すぐにでもお前と殺し「却下」……」
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「ここがゲームセンターだよ」
「騒がしい所ね」
「……(フラフラ)」
「大丈夫、レン」
「……(コクコク)」
「ねえ、志貴これは何?」
「ああ、それは格闘ゲームっていって対戦するものだよ」
「ふーん」
「やってみる?」
「遠慮するわ。私の性に合いそうにないもの」
「そう?」
クイクイ
「んっ?何、レン。ああ、それはパンチングマシーンっていってパンチ力を測るものだよ」
「へぇ、“志貴”。やってみて」
「何で、俺がこんなものを…」
「やりなさい」
「…やれやれだ」
七夜志貴は溜息をつきながらもグローブをはめ、構えた。
レディー、ファイト!
「しっ!」
どんっ!
【460Kg】
「普通にすごいな…」
「そうなのか?」
補足として、一般成人男性だと大体140〜170前後、ボクシングの軽量級のワールドチャンピオンクラスで400前後、マイクタイソンのフックの衝撃波で300、といういったところ。
「……(じー)」
「俺はちょっと遠慮しとくよ(同じ存在なのに負けてたら悔しいし)」
厳密には違う存在だがな。・
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そんなこんなで楽しんだ後ゲームセンターを出た。レン達は音楽関連のゲームをしたとだけ言っておこう。決して書くのが面倒とかじゃない。本当だよ。
「次はどこに行こうか?」
「商店街の方に行ってみましょ」
「そうしようか」
「……」
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「色んなものがあるのね」
「うん、そうだね」
忘れているかもしれないが、ここは夢の世界なので買い物は出来ない。では、なぜケーキは買えたんだ、とか不粋な質問は無しにしてほしい、いやホントマジで。
「ウインドウショッピングも中々いいものね」
「そうなの?」
「ええ、普段出来ないことだし」
「……」
「同情とかはなしよ」
「あっ、その」
「謝るのもなし」
「…楽しい?」
「ええ。」
「レンは?」
「……(コクコク)」
「そうか」
「俺は楽しくな「お前には聞いてない」……」
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商店街を一通り回った後、公園に帰って来た。
「さてと、そろそろ俺とお前で殺し合「却下」……」
「そろそろ夢の時間は終わりね」
「もうそんな時間なのか?」
「あと数分もすれば日が昇くらいね」
「…そっか。そういえば、今日の夢は君の希望かい」
「私とこの子のよ」
「(コク)」
「そっか。今日は楽しかったかい?レン」
「ええ。楽しかったわ」
「(コクコク)」
「よかった」
「俺は欲求不満だがな」
「死者でも相手にしてろ」
「奴らはつまらん」
「知るか」
そう宣っていると世界がぼやけ始めた。
「そろそろ起きる時間みたいだ」
「またね、志貴」
「ああ、またな。レン」
そう言ってレンと一緒に行こうとした時
「志貴!」
「んっ」
「その、…あ、ありがとう」
「どういたしまして」
世界が黒く染まった。
・
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「んっ」
「にゃー」
「おはよう、レン」
「にゃー」
朝の挨拶をしてレンの頭を撫でた。
「良い夢をありがとうな、レン」
「にゃー」
コンコン
「志貴様、お目覚めですか」
「ああ、おはよう、翡翠」
今日も一日が始まる。
追伸・この日も某三人娘の喧嘩があった。
「夢の世界にずっといようかな…」
「にゃー」
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後書き
ほのぼのです。七夜志貴を出しましたが最初のコント以外ほぼ背景でした。というかレンも背景でした(笑)。難しいんですよね、レンの表現って。滅多に喋りませんし。MELTY
BLOOD
Re・ACT以外で喋ってるとこ記憶にありませんし。しかし、やはり白レンはツンデレでしょう。某ツンデレゲームに出る資格を得るほどの( ̄ー ̄)ニヤリ。ではこの辺で。MHPでした。
管理人より
前回とは打って変わったほのぼの空間ありがとうございます。
レンと白レン、遠野と七夜、双方の対比が非常に面白かったです。
また投稿お待ちしています。